イタリア~お別れとミラノ~

チューリッヒに戻るとロマンは車を返しに実家の町へ戻った。私はシベリア鉄道を一緒に旅したドイツ人のバレンティンと再会した。モスクワで別れてからまだ1ヶ月も経っていないなんて。遠い昔のような気がする。バレンティンは半年東南アジアを旅してドイツに戻り、少しゆっくりした後すぐにまたチューリッヒの元働いていた病院で看護師として再就職した。半年振りに現実世界に戻った感想や、旅の思い出、彼女のことなど色々な話をした。バレンティンはアイスをおごってくれて、今まで見たことが無かったチューリッヒのおしゃれエリアを案内してくれて楽しい時間を過ごした。夕方に別れる時、「私は12月になったらベルリンに行くからまた会おう」と約束した。

バレンティンと再会
バレンティンと再会

私はロマンの近くに居られる最善の方法を考えた時にベルリンに滞在することを思いついた。私がスイスで働くことは不可能に近いけれどワーキングホリデーのビザを使えばドイツに1年間滞在することができるし、ベルリンは物価が安いことで有名だ。ベルリンにいさえすれば時々ロマンに会いに行けるし、遊びにきてもらうこともできる。「でも、そうしたら世界一周の旅はどうするの。本当にその理由で念願の旅を諦めることになっていいの」私はこの3週間自問自答していた。けれど好きな気持ちに勝てなかったのでそういう決断を下した。ロマンもこの3週間何度もそのままスイスに住めないかなと聞いてきて、実は私も日系企業に電話したりして就職の機会を探したがドイツ語もフランス語も話せない自分にはチャンスがなかった。

これからドイツでワーキングホリデーをする前に悔いが無いように、12月という自分で決めた期限までずっと行きたかった国に行くことにした。ロマンとの別れは非常に辛かったが、再会を固く約束してチューリッヒを出た。スイスでの思い出を振り返ってみると良かったことしかなくて、ロマンにはとても感謝した。スイスという国は私にとって両親の新婚旅行先だったということを含めても全く関心も興味も無い国で、ロマンと会うまで何も知らなかった。また国のレベルがかなり高く、経済も文化も行政サービスも発展していて人は皆お金持ちで知れば知るほど私には縁が無いような国だった。ロマンと出会うことがなければきっと一生行くことがなかっただろう。それでも何故だろうか、これからもロマンと付き合っている限りスイスに来ることはあるはずなのにこれが最後であるような気がした。

インターネットで申し込んでいたドイツ人カップルのカーシェアの車を待ち、20ユーロ払ってミラノまで乗せてもらった。ロマンと何日もかけてバナナスプリットから見た景色は数時間で過ぎ去っていった。また一人の旅に戻っただけなのにとてつもなく悲しかった。ミラノの郊外で下ろされたので電車に乗って中央駅まで行き、地下鉄に乗り換えて宿に向かった。

ミラノの街
ミラノの街

ミラノに来たのは明日ローマから出発するアルメニア行きの飛行機に乗るため。去年出張で来た時にマイルが貯まり、イタリア発の飛行機に手数料だけで乗れることになった。それでスイスから一番近いイタリアの都市ミラノに来たのだった。ミラノは去年訪れたローマやベネチアやフィレンツェに比べるとあまり華がない街だった。それでもずっと行ってみたかったドゥモを見学することができて嬉しかった。夜はアペリティーヴォと呼ばれる、食前酒を頼めばおつまみが食べ放題というミラノスタイルのバルへ行き生ハムを食べた。それでも一人で食べる夕飯は味気ないもので、胸に空虚さを感じた。

ドゥモ
ドゥモ
中の様子
中の様子
ドゥモから出るところ
ドゥモから出るところ
おつまみ前菜もりあわせ
おつまみ前菜もりあわせ

 

宿ではロシア人の美しい留学生タマラと友達になった。タマラはミラノの大学で建築を勉強中で、日本の建築家や黒澤明をとても尊敬していて日本の話をたくさん聞きたがった。ロシア人の友達ができて、また改めてロシアを訪れたら違う一面を見せてくれるかなと思った。

翌日はいくつか教会を訪れて、中心部を散策し美味しいジェラートを食べた。イタリア人は今まで旅したヨーロッパの国で一番親切だと思った。地図を見ながら街角で立ち尽くしていると、目的地まで連れて行ってくれたり、道順を聞くと私の肩に手を載せて大きなジェスチュアで説明してくれたり人の温かさを感じることが多かった。クールなヨーロッパとは違う、情に厚い一面には大変好感を持った。

サンマウリツィオ教会
サンマウリツィオ教会
サンタンブロージョ聖堂に眠る聖人たち
サンタンブロージョ聖堂に眠る聖人たち
サンタンブロージョ聖堂のキリスト像
サンタンブロージョ聖堂のキリスト像
優しいひかり
優しいまなざし

夕方リナーテ空港からローマで乗り換えてアルメニアへ向かった。飛行機で隣に座ったのはイタリア人の写真家ロモロで、ジャーナリストの友人と一緒にエレバンの市民生活を撮影して写真集を作るためにアルメニアに向かっていた。何とフェリーニ監督とも仕事をしたことがあるらしい。ロモロは私の旅の話を聞き、「急いで周りすぎている。もっとゆっくり旅をして自分の心に耳を傾けなさい」と言いヘルマンヘッセの『シッダールタ』という本を読むように薦めた。私は驚いた、というのも先日バレンティンに同じ理由で同じ本を読むように薦められたからだった。これはお告げに違いない、と思い必ずその本を読むことを自分に誓った。

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