８月１１日。 家族に別れを告げて、東京駅のバスターミナルに向かった。会社を辞めてから１ヶ月弱、祖母宅で毎日ぬくぬくと生活していたらあっという間に時間が過ぎ去った。まだ別れを告げていない友達がたくさん居たけれど、神奈川に戻って以来東京まで出て行くのが面倒であまり誰にも会わずに出発の日が来てしまった。
この日の為に何年も準備してきたのにまるで実感が湧かなかった。見送りも面倒だったので断った。昔から家族との折り合いが悪く、会社を辞めてから実家には２日しか戻らなかった。仕方ないと思う、折り合えない私が大人げないのかもしれないけど、今に始まったことじゃないんだから。そんなわけで一人東京駅に行った。 ４年間も毎日通っていたのに何週間かぶりに見る東京駅は大都会すぎて全く親近感が持てなかった。きっともうこの一等地で働くことはないだろう。昼休みに皇居を散歩したり、仕事上がりに銀座で遊んだりするような憧れのOL生活ももう終わり。本当に恵まれた４年間だった。バスを待つ間最後のラーメンを食べた。名残惜しくてスープの最後の一滴まで飲み干した。お盆の成田空港は出発客でいっぱいだった。韓国行きのチェジュ航空に乗り、K-POPとコスメ買いしめツアーに向かう若い女の子たちに囲まれて離陸すると、孤独感と期待が入り混じって何とも不思議な気持ちだった。
ソウルの街中に繰り出して行きたい気持ちもあったが過去に何度も旅行していたので今回は見送った。代わりに仁川空港の中にある２４時間サウナに入って床にござを敷いて寝た。これが記念すべき世界一周最初の夜か。雑魚寝のいびきがこだまする中私も早々に就寝した。朝起きると何十人も寝ていた室内はからっぽだった。私も支度してターミナルに向かった。これからようやく本当の旅が始まるだった。
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